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第3章

3章を書き始めました

第3章 ケーススタディ

本章では、先進的なCXデザインが実際にどのように展開され、顧客の全感覚やナラティブを刺激する体験として具現化されているか、具体的な事例を通して解説します。ディズニー、ANA、資生堂という世界的ブランドの現場での取り組みが、それぞれ異なる角度から「思い出が生まれる瞬間」の創出に寄与していることを示します。

3.1 ディズニー:ゲストが「思い出を持ち帰る」体験設計

3.1.1 ゲストが「思い出を持ち帰る」体験設計

ディズニーのテーマパークは、単なるアトラクションの集合体ではなく、来場者一人ひとりがその場で特別な体験をし、帰路につく際に「ここでしか味わえなかった魔法の瞬間」を心に刻むことができるよう設計されています。パーク全体が一つの巨大な物語として構成され、各エリアやアトラクションが連続したストーリーの一部として機能することで、ゲストは自らの体験を物語として再構築し、家族や友人に語りたくなる体験を得るのです。

3.1.2 五感に訴える仕掛けとナラティブの創出

ディズニーは、視覚的な美しさはもちろん、音楽、香り、触感といった五感すべてに訴える演出を惜しみません。例えば、パレードやショーでは、圧倒的な映像とサウンドが組み合わされ、来場者はまるで夢の世界に迷い込んだかのような没入感を体験します。また、キャラクターとのふれあいは、単なるパフォーマンスに留まらず、各キャラクターが持つストーリーやブランドの哲学を体現しており、これが後にゲスト自身のナラティブとして語り継がれる仕組みとなっています。

3.2 ANA:3.11と未来への希望を届けた体験の創出

3.2.1 3.11の現場での取り組み:ポケモンコラボレーションの事例

ANAは、3.11の大震災という未曾有の危機の中で、被災地に希望と安心を届けるための取り組みを実施しました。特に、ポケモンとのコラボレーションは、子どもたちに笑顔と夢を提供するための象徴的なプロジェクトとして注目されました。限定デザインのキャラクターグッズや、特別な演出により、子どもたちは単なる航空サービスを超えた、心に残る体験を実感しました。この取り組みは、災害という困難な状況下であっても、ブランドが提供する体験が未来への希望と結びつくことを示す好例です。

3.2.2 777初着陸と、未来への希望を届ける体験

また、ANAは777機の初着陸という挑戦的なプロジェクトを通じて、技術的なイノベーションとともに、乗客に特別な体験を提供しました。この初着陸は、航空機という一つのモノが、単なる移動手段を超えて、未来への可能性や再生の象徴となる瞬間を生み出しました。乗客は、その瞬間に込められた企業の想いや、災害からの復興という社会的意義を感じ取り、ブランドへの信頼と共感を深める結果となりました。

3.3 資生堂:全感覚を刺激する体験プログラムとナラティブの再定義

3.3.1 「自分をおそうじする」体験プログラム:心・肌・体の整え方

資生堂は、「自分をおそうじする」という革新的なコンセプトのもと、単なる美容効果にとどまらない体験を提供しています。このプログラムでは、参加者が自らの心・肌・体を総合的に整えるプロセスを体感できるよう、洗練された空間演出とともに、視覚、聴覚、触覚を刺激する各種アクティビティが組み込まれています。たとえば、特別にデザインされた清潔感あふれる空間でのリラクゼーションや、丁寧に施されたマッサージ、香りの演出などにより、参加者は自分自身の内面と外面が調和して変化していく様子を実感します。この体験は、単なる美容プロセスではなく、自己再生と新たな自分への再発見として、参加者の記憶に深く刻まれるのです。

3.3.2 肌を通じたコミュニケーションの探求:多文化の視点とナラティブ

さらに、資生堂は肌という媒介を通じた新たなコミュニケーションの可能性を探る実験的プロジェクトも実施しています。多様な国籍や文化背景を持つメンバーが一堂に会し、肌が単なる美しさの象徴ではなく、人と人とのふれあいや感情の共有のツールとして機能することを検証する試みです。参加者は、異なる文化や価値観が交差する中で、肌を介した触感や温もり、そしてそこから生まれる共感を体験します。このプロジェクトは、従来の美容の枠を超え、ブランドと消費者が共に創り上げる物語(ナラティブ)としての価値を再定義する試みであり、今後のCXデザインの新たな方向性を示唆するものとなっています。

以上の各事例は、単に一つのブランドの成功例としてだけでなく、どの業界においても共通する「語れる体験」の本質を示しています。ディズニー、ANA、資生堂は、それぞれ異なるアプローチで全感覚を刺激し、参加者が自らのナラティブとして体験を反芻する仕組みを作り出しており、これこそが現代のCXデザインにおける究極の目標であると言えるでしょう。

次章以降では、これらの成功事例を踏まえ、実際に自社で取り入れるための具体的なフレームワークや実践メソッドを解説していきます。各ケーススタディがどのように理論と実践を融合し、顧客の記憶に残る「瞬間」を創出しているのか、そのプロセスに注目しながら、あなた自身のCXデザインに活かせるヒントを掴んでいただければと思います。

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